街の解像度を上げ、壁の乗り越え方を教える。スケートボーダー 北島宗和のボーダーレスな視界

コンクリートの照り返しが強い昼下がり、カワサキ文化公園に北島宗和の姿があった。
デッキに乗るわけでも、指示を出すわけでもない。ただ静かに、子どもたちの動きを見ている。転倒した子がいる。立ち上がるタイミングを測るように少し待って、それから北島がゆっくりと近づいた。「もう一回やってみようか」。その声は、命令でも励ましでもなく、ただ隣に立つ人間の言葉だった。
サングラス越しの目が、子どもの表情を逃さず捉えている。

北島宗和、48歳。Chees inc. 代表、Chees Skateboard School 主宰。Eyevolスケートボードチームのマネジメントを担いながら、東京大学チームと共にスケートボードが都市にもたらす可能性について研究を進めている。スケートボードが「危険なもの」として排除されてきたこの国で、彼はまったく違う景色を見ている。

警官がスケーターを撮影していた。ボルドーで目撃した、ありえない景色
「日本のストリートでは、スケーターが人間扱いされないことも少なくありません」
北島はそう言って、少し間を置いた。怒りではなく、事実として述べるような口調だった。
「だからこそ、感情論で戦っても仕方ない。データとロジックで話せる土俵をつくるしかないんです」
その確信の源泉は、フランス・ボルドーにある。
かつて日本と同様、スケートボードが全面禁止だったボルドーは、現在、規制が解除され、スケーターと市民が当たり前のように街を共有している。北島が現地で目にした光景は、想像を超えるものだった。
取り締まる側であるはずの警察官が、スケーターに向けてスマートフォンを向けていた。排除するためではなく、撮影するために。笑顔で。


「そこには対立がなかった。スケーター側が時間帯や場所のルールを守ることで、通行人との間にコミュニケーションが生まれていた。それだけのことで、街の空気がまるで変わるんです」
帰国した北島は、東京大学のチームとともに研究会を立ち上げた。ルール設計、管理者責任、行政との合意形成 -多角的な視点から、都市における規制解除の論点を整理している。2027年秋頃を目標に、その研究を社会へ発表する構えだ。
「スケートボードを単なる危ない遊びで終わらせず、街の賑わいや居場所づくりに繋げる。それを感情ではなく、言語化された『成立条件』として示したい」
ロジカルでありながら、どこかに熱がある。北島という人間が面白いのは、その両方を持っていることだ。

引きこもりだった子が、学校に戻った日のこと
北島が運営する「Chees Skateboard School」は、スケートボードの技を教える場ではない。より正確に言えば、人生における「壁の乗り越え方」を身につける場だ。
ある男の子のことを、北島は今でもよく話す。
いじめをきっかけに引きこもりになった子だった。集団でやるスポーツが苦手で、誰かと一緒に何かをすること自体が怖くなっていた。親に連れられてスクールにやってきたとき、その子はずっと端のほうに立っていた。

スケートボードには、待ってくれる誰かがいない。コーチに急かされない。チームメイトに比べられない。自分のペースで、自分の足でデッキに乗る。転んで、立って、また転んで、また立つ。それだけだ。
「最初の一ヶ月は、ほとんど乗れなかった。でも、ある日突然、フラットで10メートル滑れた。その瞬間の顔が忘れられない」
誰かに褒められたからじゃない。タイムを競ったわけでもない。ただ、昨日できなかったことが、今日できた。それだけのことで、その子の何かが変わった。
数ヶ月後、その子は学校に戻った。

「スケートボードは、失敗と挑戦が日常にある遊びです。だからこそ、粘り強さや自己調整といった非認知能力が自然と育つ。勝ち負けじゃなく、昨日の自分より一歩前へ——それがスケートボードの本質だと思っています」
こうした教育の現場で、北島が欠かさず身につけているのがEyevolのアイウェアだ。真っ黒ではなく、目元が透けて見える薄さが、ここでは決定的な意味を持つ。
「真っ黒なレンズだと、子どもに威圧感を与えてしまう。でもEyevolの薄いレンズなら、眩しさを防ぎながら、目を見て話せる。子どもって、大人の目をちゃんと見てるんですよ。目が見えないと、安心できない」

表情の変化を見逃さないこと。それが、北島にとってのコーチングの根幹だ。そのために、レンズの「透け感」は機能ではなく、哲学に近い。
保護者には「スケートボードサポートBOOK」を手渡す。技術の解説書ではなく、「挑戦を見守る関わり方」を伝えるための冊子だ。教えるのは子どもだけじゃない、と北島は言う。「親御さんが変わると、子どもが伸びるスピードが全然違う」。

「かけていることを忘れる」それが、最高のギアの証明
北島の1日は、まるで別人が動いているかのように切り替わる。
午前中は行政担当者との会議。資料を広げ、データを示し、スケートボードの「社会的価値」を言葉に換えていく。午後はスクールへ移動し、デッキを持った子どもたちの前に立つ。指導を終えた後は、自分自身もデッキに乗る。

その全てのシーンを、Eyevolのアイウェア【BELLO(49) col.MDM-LY-PL-BK】とともに過ごす。
「一番のお気に入りは、圧倒的な軽さとフィット感です。会議からそのままデッキに乗っても、ズレない。いちいち掛け替えるストレスがない。というか——かけていることをほとんど忘れているんです」
かけていることを忘れる。それは、最高のギアが持つ証明だと北島は言う。存在を主張しないから、思考を邪魔しない。

スケーターは、一般の通行人とは違う視点で街を読んでいる。路面のわずかな段差の角度、コンクリートの質感、影の濃さと光の方向。それらは滑走において、判断の精度に直結する情報だ。
「屋外パークのコンクリートの照り返しの中でも、Eyevolをかけていると、必要な情報が読み取りやすい。視界の精度が上がると、街を見る解像度が上がる。見えないことへの恐怖が消えて、それがそのままケガの予防になる」
北島にとってEyevolは、ファッションでも、スポーツギアでもない。思考と行動を繋ぎ、判断の質を上げるための相棒だ。そして、会議室でもパークでも、ストリートでも——どの顔の北島にも、ごく自然に溶け込んでいる。

コミュニティと共に描く、これからの景色
今回の撮影の舞台となった「カワサキ文化公園」は、北島にとって特別な場所だ。子どもから大人までが集まり、関係性が育ち、スケートボードを軸にしたコミュニティが根を張りつつある。と同時に、都市とスケートボードの共存を実地で検証する「実験場」でもある。

彼が思い描く未来の景色は、シンプルだ。
トッププロだけが主役じゃない。子どもも、初心者も、見ているだけの大人も、同じ空間に交わる。「見る、やってみる、できた」が連鎖していく。その体験が、街の中に当たり前にある。

境界線をなくし、挑戦する者の背中を押し、安全を守る。そのピースフルな空間の最前線に、北島の眼差しがある。そしてEyevolが、その視界を支えている。
北島が見ている景色を、あなたも覗いてみてほしい。

PROFILE
プロフィール北島 宗和
Munekazu Kitajima












